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繋がる職人
左官職人 滝川さん
 ■左官職人 滝川 久則さん
みなさんは「左官」という仕事をご存知だろうか?ちょっと一昔前なら自宅の壁や塀などにその跡がみられたかもしれない。子供の頃、和室の壁に爪を立て引っかいて遊んだ経験があるのは筆者だけだろうか。今でも古い民家や白壁の塀が立ち並ぶ文化的遺産の残る街ではたくさん見ることができるが、現在の暮らしの中でいったいどれくらいの人たちが左官を身近に感じているだろう…。

「左官」とはつまり鏝(コテ)を用いて壁や床、塀などを塗り上げていく仕事のことをいう。材料は土や石灰(消石灰)、珪藻土など様々でそこに接着の役割となる藁やスサ、ふのりなどを加え水をまぜ合わせてつくられる。

左官の原点は人々が竪穴式住居で暮らした縄文時代にまで遡るという。穀物などの貯蔵や雨風をしのぐために身近にある材料(つまり「土」)で壁となる土塀を作ったことだと考えられており、やがて木を細かくして壁の芯をつくりその上に土を塗るといった工夫が生まれた。時代が進むにつれ単に壁としての役割だけでなく表面の装飾などを施す技術にまで発展していった。白い漆喰が塗られた旧家の蔵に立派な鶴や家紋などのレリーフが施されているが、あれは左官職人さんたちの腕によるものだ。

さて、今回ご紹介する職人さんは親子二代にわたり左官職人という滝川久則さん。親方である父親は70歳をこえて今も現役というだけに、現在39歳の滝川さんは若手?というのだろうか…気力・体力ともに今がいちばんアブラの乗っている左官職人さんだ。

「最初は、まぁなんとなくでした…。」

そう語る滝川さんは左官職人のもとに生まれ育ち10代後半でこの道に入った。素直に職人の世界へと足を踏み入れ21年の歳月が経とうとしているが、同じ職人である親方(父親)との道のりが平坦だったはずはない。そこにはどのような世界があったのだろうか。

「父親とはいえ親方ですからね。厳しいというかそんなもんですよ。まずは材料を覚えることから始めます。そして練る。按配があるからきちんとできないと鏝はもたせてもらえないです。そのあとは材料を鏝にのせれる様に日々練習。それができなければ始まらない。塗り方だっていちいち教えたりなんてないから、隣でやってるのを見て覚えて、思い出しながらやってみる。何度も繰り返して少しずつ自分のものにしてゆくんです。それに頭で考えてるだけじゃダメで身体が勝手に覚えるようになるまでやるんです。」

誰も手取り足取り教えてくれるわけじゃない。だからこそ口に出さなくてもダメなモノはわかる。そこに厳しい職人の世界が見えてくる。こうして続けてこれた理由をたずねると

「うーん、プライドというか…いまに見てろ!見返してやるぞ!っていう思いですかね。本気になったのは、ここ10年ぐらいです(笑)」

笑いながらそう応える滝川さんだが、とても正直で職人としてのまじめさが伝わってくる。

「毎日やってても同じ壁は作れない。そのくらいビシッと平らに仕上げるのは難しい…。光の差し加減なんかでわかるんですよ。満足のいく仕上がりを目指して日々勉強です。」

下塗り
漆喰
下地の仕事(写真上)は仕上がりに影響する。一定の動きを保たねばならない。仕上げ(写真下)は漆喰。施工例にて紹介(S様邸)。


「シュッシューッ、シュッシューッ…。」

滝川さんの壁を塗る音はとてもリズミカルで意外にもその動きは速い。わずか数ミリの厚さを均一に保ちながら一定のリズムでしあげてゆく。乾燥状態も計算しなくてはならないのでのんびりはしていられない。手元が狂えばあっというまにくずれ仕上がりに影響する。1ミリの誤差をも許さないこれぞ職人技!!である。

以前はビルの仕事や壁の下地づくりの仕事が多かったが、ここ5年ほど前から最近のエコブームも重なってか自然素材を用いた塗り壁を希望する人が増え、仕上げの仕事に精を出す機会も多くなったという。

「最近はお客さんも材料のこととかよく勉強してこられるんです。出来の善し悪しもお客さんの表情一つですぐにわかります。うまく出来た時なんかは顔が明るくなるんです。何しろ喜んでもらえるのが一番ですから…。」

「色なんかもできるだけ均一に…と心がけていますけど、本当は自然素材というのはぼんやりとムラがあって当たりまえなんです。逆にそうじゃないと自然素材とはいいがたい。最近ではムラ無く仕上げるために既調合の材料がふえましたけどね。自分の親父の頃は土を寝かして木舞を編んで、下塗り・中塗り・上塗りとやっていったんです。今は滅多にありませんけどね…。」


塗り壁は、家を建てた記念に手形を残せるというのでお客さまにもとても喜ばれている。いろんな自然素材の性質を知り実際に手で触れてみよう!という目的でポエムガーデンハウスでは先日も自然素材体験というイベントを開催した。また開催する予定なので、興味のある方はぜひ!

左官の道具
 
 
左官鏝(こて)
「左官」の語源はさまざまだが一説によると 、律令制のころ宮中などの建設工事を担当する役所木工寮(もくりょう/こだくみのつかさ)の官名「属(さかん)」に由来するといわれている。
滝川さん
簡素化が優先され、壁もパネルやクロスなどの工業製品を用いることが多い現在だが、「ほんとは塞いだりしないほうがいいんだよね。」と語る滝川さん。塗り壁は自然の呼吸で室内の湿度をコントロールしてくれる。
材料
塗り
滝川さんがワンコと呼ぶ円錐型の柄杓のようなもので材料をすくい鏝板にのせ、鏝で壁を塗ってゆく。
真剣な滝川さん
上塗り中
仕上げとなる上塗りは、最終的に住む人の目に触れる部分となる。広い面積の壁を均一に仕上げるのは毎日やっていても難しいと滝川さん。そんな左官の世界を支えるのは職人の手の感覚のみ。
 ■お道具拝見!!
左官鏝
形見分けの鏝
先輩職人さんの形見分けという鏝。使い込まれて持ち手が変形している。こうして道具と共に伝統が滝川さんへと受け継がれていく…。
ツマミ鏝
「ツマミ鏝」(丸面・角面)といって出隅部分の面引きに使用する小さな鏝
手作りの鏝
こちらは滝川さん手作りの鏝。やはり道具を工夫してこそ職人だ!!
     
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